2012.12.19
第12回縮小社会研究会の報告

 
時:2012年12月16日(日)13時−17時
場所:京都大学物理工学校舎216室
 
   縮小と言うと大半の人の拒絶反応を起こすと思っていました.しかし,「縮小社会への道」の出版後,マスコミなどで取り上げられています.多くの人の心の片隅に「このまま続くはずはない.それしかないのかな」という直感があるのだと思います.そして,江戸時代に戻るのか,今の生活レベルを持続できるのか,どんな生活になるのかと問われます.もちろん戻ることは不可能です.ここで,江戸時代の生活とはどんなものかを認識するとともに,これからの縮小社会の姿の一面を探ってみたいと思います.
 
1.「原発なしで……!? 江戸時代の生活に戻るんですか」 大野 弘
  いま,「脱原発」が大声で叫ばれる一方で,それに替わるエネルギーを,と姦しくいわれ,新エネルギー開発の必要性が市民権を得ているのが現状である.でも,ちょっと待って,脱原発だけでいいではないか,といいたい.それも今すぐにでも.いずれは枯渇する化石燃料は一切使わない,一年経てば,その年に使ったエネルギー資源の量が元に戻る,そんなやり方で自然を利用する 一年サイクルのエコな消費社会が,つい一世紀半前まで存在していた.「原発なしで……!? 江戸時代の生活に戻るんですか」そんな目くじら立てないで,ちょっと江戸の庶民の日々の暮らしや働く姿を,覗いてみませんか.
2.「最新建築技術と再生エネルギー活用で実現する“ネオ・江戸時代”」 家入龍太
  “ネオ・江戸時代”とは江戸時代並みの燃料消費で安全・安心・快適な生活を営める社会のこと.化石燃料や原子力に頼らず,3次元モデルで建物を設計する最新建築技術「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」と,最先端の省エネ・創エネ・蓄エネ技術を駆使したネオ・江戸時代のイメージと実現へのプロセスを考える.
3.「縮小社会を選択する」 佐藤国仁
  松久さんが2時間出演されたフジTVプライムニュースにて「社会の価値観,自分の生き方を他人からとやかく言われる筋合いはない」との視聴者投稿が紹介されていました.縮小社会を必然の唯一解と見なすのか,一つの選択肢と見なすのか,というのは不毛な議論となるおそれを感じます.「縮小は楽しい」という試論をたたき台に載せたいと思います.
4.「私はなぜ縮小研究会に参加したのか?人生二毛作,農的生活,半農半X」 青野豊一
  これで二回目の参加なので,まず自己紹介を兼ねて,私の昔と今を語ることを通して,未来社会を語る人たちに一言言いたい.現状の社会経済システムを批判して,あるべき本来の社会像として社会相互扶助の共同体の再建を語ったり,市場での貨幣による交換を否定的に語る人がいますが,そこには大きな問題がある.特に,共同体の建設を口にする人には,要注意!! 私のこのような語らいの中から,来たるべき「縮小社会」のイメージを少しはっきりさせることができたら幸いです.
 
  各講演に対して,活発な討論がなされた.そして,一般社団法人縮小社会研究会の来春設立が準備中との報告がなされた.懇親会にも多数が参加した.
 
松久寛 E-mail : matsuhisa(at)maia.eonet.ne.jp
縮小社会研究会のHP: http://shukusho.org (本HP)